季節はすっかり秋一色に染まってまいりました。皆様、那須高原にお出かけいただけましたでしょうか。まだまだ間に合います。秋を満喫できること請け合いでございます。是非お出かけください。

 さて、前号は大人のマナーの悪さについて少しお話しさせていただきました。今号は、それと正反対に「まだまだ捨てたものじゃないよ、日本」と感じた出来事をお送りいたします。どうぞ最後までお付き合いください。

 先日、電車の中で久しぶりに心温まる光景を目にしました。その日は電車内が大変込み合っており、立っている方も多くいました。そこへ年の頃70代後半の3人組男女が乗ってきたのです。「あら、混んでいるわね、座れないわ」と言いながら吊革に手をかけていました。その時です。隣にいた18歳ぐらいの青年が、つかつかとお年寄りの所に近寄り、「どうぞ、こちらに座ってください」と席を譲ったのです。お年寄りは「いいの、ごめんね、ありがとうね」と頭を下げておりました。席を譲った青年は真っ赤な顔をして恥ずかしそうに移動していました。何かホッとする光景でありました。


 皆様は人に席を譲った経験はありますでしょうか。「そんなこと当たり前だよ」という方が大半かもしれませんが、席を譲る時ってすごくタイミングが難しい時がありますよね。私は70歳になりますが、譲られる側でありながら、「いや、まだまだ若いので譲る側だよ」といった葛藤もあり、悩む時があるのです。しかし、いずれにせよ譲るという行為は素晴らしい行為であり、日本でも公共の乗り物でお年寄りや体の不自由な人に席を譲るという基本的なモラルが文化として大分定着してきたように思います。そして、この話には続きがあり、ある意味これからが本番でございます。
 
 席を譲られたお年寄りが下車するときのことであります。お年寄り3人組が席を譲ってくれた青年に近寄り、「ありがとうございました、ありがとうございました、助かりました」とニコニコしながら何度も頭を下げ御礼を言ったのです。青年は真っ赤な顔をしながら「大丈夫です、良かったです」と返事をしていました。席を譲る光景は当たり前になりましたが、譲ってもらった方が降り際に席まで行き改めて御礼する光景はあまり見たことがなく、人に感謝するということがいかに他者を感動させるかということを学ぶ機会になり、一日がとっても得した気分になりました。席を譲った青年も、譲られたお年寄りもきっと素晴らしい人生を歩んでいる方々だと痛感した思いであります。私もこれから努力して参りたいと思います。

 さて皆様はどんな風に感じ取っていただいたでしょうか。今号も最後までお付き合い頂きありがとうございました。今号も最後は夫婦の会話で締めたいと思います。

 

私「今日の青年、素晴らしかったよ」

妻「きっとその青年のご両親がしっかりしているのかもしれないね」

私「本当だよ、同感だよ」

妻「謙一郎(息子)、最近良い所も悪い所もお父さんに似てきたね!」

大変お粗末様でございました。

11月号